2011年冬にパクチーハウス で個展をした写真家の吉田亮人さんが『しゃにむに写真家』という本を出版します。2月22日発行。今や国内のみならず世界から評価される吉田さんが、今のキャリアにたどり着いた道筋を書いています。
小学校教員だった吉田さんが写真家を志したのは30歳になってから。自分の人生を自分で切り拓いたとても魅力的な人です。まだ無名だった頃、人の紹介でパクチーハウスに来た吉田さんと初めて話したとき、こういうアーティストにぜひパクチーハウス に関わってもらい、そして花開いてほしいと思いました。
パクチーハウスの壁は、開店当初からギャラリーとしてお客さんに使ってもらっていました。利用料は無料。可能な限り在廊、というかレストランなので店内で酒でも飲んでいるようにお願いしていました。作品を見て、ほとんどのお客さんはそれを店主なりスタッフのものだと思い込みます。そして、あれやこれや感想を述べます。
「これらは僕の作品なないんですよ。これこれこういう方が撮った写真で・・・その方とはあそこでビールを飲んでいる方です」
かくしてパクチーハウスに来たお客さんは、意図せずアーティストと会話することになります。「旅と平和」をテーマにするか、それを意識して企画をしてほしいという条件があり、多くの展示は異国情緒溢れるものでした。作品を見て、世界に思いを馳せたり旅の話をします。作品の解説をすることはもちろんとして、そのアーティストの人となりや考え方、背景などを知ることになります。多くの場合連絡先を交換し、作品展に来てくれたお礼状や次の展示のお知らせを送ることになります。「よく知っている」アーティストからの連絡を各人は喜び、機会を見つけて展示を見に行きます。
パクチーハウスで展示をしたことのあるアーティストから、展示期間のコミュニケーションの結果として、その後も長く続く友情や継続的なファンをつかむことができたという報告をたくさんいただきました。アーティストとの距離感を近くしたいという思いはこの頃からあり、だから鋸南エアルポルトのような場を作ったのだと思います。
ちなみに、『しゃにむに写真家』の204ページにパクチーハウスでの出来事を書いてくれていました。赤木優里さんは大学の後輩に当たる人で、コワーキングを立ち上げたいと僕に相談に来て知り合いました。吉田さんの写真展を1人でも多くの人に見てもらいたいと思い、飲み会を企画して赤木さんを呼び出したことが、吉田さんのその後のキャリアに大きな影響を及ぼすことになったようで、嬉しいです。
吉田さんは僕の大学時代からの友人の岸田浩和監督(ドキュメンタリー作家:ドキュメンタリー4という会社を一緒に設立しました)と、この退蔵院襖絵プロジェクトの撮影を行いました。その縁で京都の料亭の最後の50日を追ったドキュメンタリー『Sakurada -Zen Chef』という作品が生まれ、それがニューヨークのフード・フィルム・フェスティバルで最優秀短編賞を獲得することにつながります。その時に通訳として来てくれたのが赤木さんの妹でした。
SAKURADA Zen Chef_トレーラー from Hirokazu KISHIDA on Vimeo.