パクチーハウス東京の店主Kyo paxiは、メドックマラソン出場のため、毎年9月にフランスを訪れています。ビール腹克服のためにランニングを始めた僕は、給水所にワインが置いてあるという酔狂なこのマラソンに一度だけ出場しようと、5年前にボルドーを初訪問しました。「酒飲んで走るなんて危険じゃないの?」という多くの声に同意しながら現地入りし、酒飲みランナーとしての思い出作りのつもりで走り始めました。
実は言うと僕はマラソンが大嫌いでした。高校を出てから全く走る気はなかったし、お腹の脂肪が恥ずかしいレベルになるまでは少々の運動はしたものの、「走ること」を全否定していました。走るようになったきっかけは直接僕の口から聞いてほしいですが、マラソンに苦手意識があった僕は「走ることを強制されること」がイヤだったに違いありません。
メドックマラソン2011は初めてのフルマラソン(42.195km)でした。未経験の距離に恐れつつ、色とりどりに着飾ったたくさんのランナーとともに歩みを進めて行きました。そこにいる人はとても陽気で、一緒に写真を撮ったり、楽しく会話をしたりしました。日本の学校の先生がいたら「ペチャクチャしゃべってないで真面目に走りなさい」と言ったことでしょう。そして給ワイン所に到着して驚きました。ワインがグラスでサーブされていました。他人を蹴落としてワインを取るような人はいません。立ち止まり、グラスを回してみたり、香りをかいでみたりして、周りのランナーと乾杯が始まりました。マラソン大会中に、立ち止まっておしゃべりをする! これはマラソン大会の最高のイノベーションだと感じました。
毎年日本のメディアもメドックマラソンについて報じます。たいていは「酒を飲みながら走る変わったマラソン」という視点です。それは表面的なものにすぎません。「スタートからゴールまで、ワインや仮装を通じてランナー同士がコミュニケーションを取りまくるマラソン」というのが本質だと思いました。そして、「メドックマラソンに一度行ったことがあります」と体験談を語るより、毎年訪れて「メドックマラソンは僕の人生の一部にしたい」と思い、初参加の完走前に毎年訪問することを決めてしまいました。
この素晴らしき旅をほかの人にも伝えたいと思って作ったのが「パクチー・ランニング・クラブ」です。パクチーハウス東京のお客さんなら誰でも入ることができ、メドックマラソンに関する情報提供と出場への意思を固めるための飲み会を不定期に行っています。